「あなたが無人島に1枚だけレコードを持っていくとしたら、何を持っていきますか?」
2022年秋、新宿DUGでビールを飲んでいた時、ふとそんな話を思い出した。
個人的には興味深い質問だけれど、これまで知人のミュージシャンにそんな質問をしたことはなかった。
コロナ禍以降、僕はほぼレコードでしか音楽を聴かなくなっている。
何故だろう、レコードで聞くと昔からよく聴いていた曲も、全く新しい音楽に聴こえてくる。
なんとも説明のできない不思議な感覚だけど、世界中でアナログ需要が復活していることからも、僕と同じような感覚を持ったリスナーは少なくはないのかもしれない。
もしも、どこか知らない場所に一枚だけレコードを持っていくことができるとしたら
僕ならあまりにも有名なこの一枚を迷わずに選ぶだろう。
僕が生まれる13年前に録音されたレコード。
1961年6月25日、ビル・エヴァンス・トリオのニューヨーク「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライブ最終日の録音。それから11日後の7月6日、ベーシスト、スコット・ラファロが交通事故で他界し、このレコードが3人での最後の公式音源となった。
たった一度しかない奇跡の瞬間の連続音が、まるで宝石のようにこぼれ落ちる。
僕にとって新宿の街に最も似合う一枚と思える。
村上春樹のおすすめの通り、アナログのA面の3曲をかけてから、もう一度一曲目「My Foolish Heart」をかける。
1.My Foolish Heart
2.Waltz for Debby
3.Detour Ahead
1.My Foolish Heart
コロナもようやく落ち着いたように思える2023年ゴールデンウィークの夜長。
「ポートレイト イン ジャズ」を片手に、マスクを外して、僕はまた新宿へ出かけようと思う。
0コメント